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12.21

患者が自由にカルテ閲覧、医師では慎重論根強く 「逆恨みされる恐れ」「興味本位の閲覧が増える」懸念も レポート 2024年12月19日 (木)配信佐藤真希(医療ライター)

PODCASTネタ

情報源: 医療維新 | m3.com

入院患者が開示請求などをしなくても自身のカルテを見られるようにした群馬大の取り組みが注目を集めている。患者のカルテ閲覧について、m3.com医師会員に聞いたところ、開業医、勤務医ともに「開示請求に応じて閲覧できるようにすべき」が約6割を占めた。「自由に閲覧できるようにすべき」という声は少数派で、内容によっては患者の誤解を招くことや業務負荷の増加を懸念する声などが寄せられた。

Q 患者が自身のカルテを閲覧することについて、どう思いますか。

開業医の62.9%、勤務医の64.9%が「開示請求に応じて閲覧できるようにすべき」と回答し、最多となった。「外来患者も入院患者も自由に閲覧できるようにすべき」、「入院患者に限って自由に閲覧すべき」を合わせた「自由に閲覧できるようにすべき」は約2割、「原則として閲覧できないようにすべき」も約2割を占める結果となった。

「逆恨みを受ける恐れ」「信頼関係に影響」

  • 現在の勤務先はほとんどが認知症の患者さんで、そういう方にカルテ開示は難しいように思う。同じく精神科の患者さんには治療方針を隠すことで治療効果をあげることもあるため、カルテ開示をすればいいものとは思わない。治療行為ひいては患者と医師間の信頼関係にも影響し、治るものも治らなくなる懸念がある。【勤務医】
  • 全く見ることができないのも問題だと思うが、常に閲覧され晒されるとなると、カルテ記載にも相当の注意が必要になり、円滑な診療にとって悪影響が出ると思う。【勤務医】
  • 患者が見るべきではないこともカルテに書かなければならない。それを見て憤慨されたり落胆されたりしても書いた医療側は責任を取れない。逆恨みを受ける恐れもある。【勤務医】

業務負荷の増加を懸念する声も

  • 患者の知る権利向上にはつながるが、カルテ記載に時間がかかるようになり、結果としては医療の質は下がる事になりかねない。【勤務医】
  • 本人は知らない方がよいけれど、医療者同士は知っておくべき内容が多々あるため、原則閲覧は反対。また閲覧される場合、カルテ記載の時間がより必要になる。現在の仕事の忙しさを考えると難しい。【勤務医】
  • 開示請求の手間がないと、興味本位の閲覧が増えて大変かと思う。群大の今後の状況が楽しみ。【勤務医】

「読まれて困ることは書かない」「略語などを書かないようにしている」

  • 実際の裁判では、「指導した」と記載していても、「患者が指導を受けて理解できていたか分からないですよね」と述べてくる原告側弁護士がいる。週に何度も通い、毎回同じことを平易な言葉で説明されているのに理解できないということは、さすがにあり得ないが、必ず「治療上の必要性を説明し患者も理解した上で是正を要請した」と記載するようになった。【勤務医】
  • 自分が直接関わらない裁判事例でも証拠としてカルテ開示などを請求されることがあるため、誰がみても経過や診断、治療の根拠と評価がわかるように記載するように心がけている。略語や日本語以外の言語もできるだけ記載しないようにしている。【勤務医】
  • 客観的事実と主観的考えを分けて記載している。【勤務医】
  • 読まれて困ることは書かない。患者の発言ややりとりを正確に書く。【開業医】
  • 誰が見ても問題ない記録と管理の証拠になるようにと思って書いている。【勤務医】
  • 開示請求の経験はないが、それに備えてカルテ記載には相当気を使っている。万が一、見られても言いようにオブラートに包んだ表現や、独自の印を使うこともある。【開業医】

 

【調査概要】

・調査期間:2024年12月6日~12月15日

・対象:m3.com会員

・回答者数:計1797人(勤務医 : 1406人 / 開業医 : 391人)

患者のカルテ閲覧、どう思う?

 

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