2024
09.06

乱立する精神科クリニック、診療の質は大丈夫? | Human Capital Online(ヒューマンキャピタル・オンライン)

PODCASTネタ

 

精神科や心療内科を標榜する診療所が大都市を中心に急増中だ。ただ、これらの診療所の中には、精神科の専門医資格を持たない医師による質の担保が不十分な診療を提供する所も存在する。そのため、受診する際は精神科診療の質を見極めたい。また、通院を継続していてもメンタルヘルス不調が改善せず、業務に支障がある従業員に対しては、産業医を介して、主治医の変更を勧めることも選択肢としてほしい。

情報源: 乱立する精神科クリニック、診療の質は大丈夫? | Human Capital Online(ヒューマンキャピタル・オンライン)

精神科や心療内科を標榜する診療所が大都市を中心に急増中だ。ただ、これらの診療所の中には、精神科の専門医資格を持たない医師による質の担保が不十分な診療を提供する所も存在する。そのため、受診する際は精神科診療の質を見極めたい。また、通院を継続していてもメンタルヘルス不調が改善せず、業務に支障がある従業員に対しては、産業医を介して、主治医の変更を勧めることも選択肢としてほしい。

「大都市を中心に、精神科診療所が急増している。その中にはフランチャイズ系の診療所が精神科診療の経験を問わず医師を集め、質が低い診療を提供しているクリニックも存在する」。こう警鐘を鳴らすのは、日本精神神経科診療所協会会長で、三木メンタルクリニック院長の三木和平氏だ。

日本では麻酔科以外は、医師が自分で標榜する診療科を自由に選ぶことができる。そのため、これらの診療所の中には、そもそも精神科を専門としない医師が診療していたり、精神科診療の経験が浅い医師が存在するケースもある。

現在、医療の世界では、科学的な知見に基づいた診療指針(ガイドライン)の整備が進んでいる。加えて、様々な検査方法が実用化し、医師の経験に頼らずとも検査値のみで診断できる疾患も増えてきた。そのため、病院に勤務していた外科医が勉強し直しながら開業して、来院する内科系疾患の患者に対応することは多く、これまで問題とされてこなかった。

ただし精神疾患は、同じ診断名でもその経過は多様にわたる。診断基準はあるものの、その内容の解釈は医師により異なり、診断を確定できる検査もない。そのため、外来で診療を続ける中で診断名が見直されることも多々ある(関連記事)。すなわち「精神疾患は、精神科の経験を持たない医師が容易に対応できるものではない」(三木氏)。にもかかわらず、「『マニュアル完備で未経験者でもすぐ働ける』と医師向け求人を出し、精神科診療に乗り出す、ファイヤークリニックという美容系診療所すらある」(関連サイト)のが現状だ。

そのような診療所は、休日や夜間も診療しており、患者が受診しやすい体制を整えているが、「その質には大きな疑問がある」と三木氏は強調する。加えて、「休職が必要との診断書を安易に出す傾向もあるため、企業にとってもマイナスだろう」とも指摘する。

精神科外来の選び方

では、精神科診療所を受診する際は、何を目安にしたらいいのか。日本精神神経学会の認定する専門医・指導医の資格を有する医師(関連サイト)が診療を担当しているか、日本精神神経科診療所協会に所属する診療所(関連サイト)かの確認をまず勧めたい。「その診療所に精神福祉士や臨床心理士が在籍しているかは選ぶ際の参考になるだろう」と三木氏はアドバイスする。すでに休職中の場合は、医療リワークを実施している、もしくは医療リワーク実施医療機関と連携しているかも確認したい。

とはいえ、体調不良時には通いやすさを重視することもあるだろう。体調が順調に回復すれば、その選択は間違いではなかったかもしれないが、長期間通っても体調が回復しない場合や、処方薬ばかり増える場合などは、受診先の変更を勧めたい。

仕事に支障が長らく生じている従業員に対しては、産業医から主治医の変更を提案してもらうという手もある。その際、産業医側のカウンターパートとして重要になるのが、精神科を専門とする産業医だ。日本精神科産業医協会に登録している精神科産業医であれば、従業員が受けている診療内容を精神科専門医として吟味でき、診療の質が悪いと判断した際は、信頼できる医師に紹介できる。実際、三木氏の元には「産業医から紹介されてくる患者は少なくない」とのこと。

精神疾患を有する患者は、過去10年ほどで2倍以上に増加している(図1)。ただし、入院患者は減少し、増加が著しいのが軽症の外来患者だ。特に軽症の精神疾患は、適切な診療が受けられれば、その多くは数年以内に安定する(図2)。治療を受けていても改善が見られない場合は、治療内容だけでなく診断も見直す必要があるが、そのような介入ができない医師が残念ながら存在することを知っておいてほしい。

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