2024
12.17

ヒトのからだで「一番古い器官」はどこだろう…? なんと「5億1500万年ものあいだ」失わなかった「ホモ・サピエンスの特徴」たる器官(ブルーバックス編集部) | ブルーバックス | 講談社(1/2)

PODCASTネタ

約46億年と言われる地球の歴史において、生命が誕生は、遅くとも約39億5000万年前と言われています。そして、最初の人類が登場するのは、約700万年前。長い地球の歴史から見れば、“ごく最近”ですが、そのホモ・サピエンスも、初期生命から現在へと連綿と続く進化の果てに生まれました。私たち「ホモ・サピエンス」という一つの種に絞って、その歴史をたどってみたら、どのような道程が見えてくるでしょうか。そんな道のりの中からとくに注目したいトピックについて、ご紹介していきます。今回は、ホモ・サピエンスへの旅の第一歩、はじめに獲得したヒトという生物に特徴的な器官は何だったか、という問題です。

情報源: ヒトのからだで「一番古い器官」はどこだろう…? なんと「5億1500万年ものあいだ」失わなかった「ホモ・サピエンスの特徴」たる器官(ブルーバックス編集部) | ブルーバックス | 講談社(1/2)

長い長い進化の中で、私たちの祖先は、何を得て、何を失い、何と別れてきたのかーー

約46億年と言われる地球の歴史において、生命が誕生は、遅くとも約39億5000万年前と言われています。そして、最初の人類が登場するのは、約700万年前。長い地球の歴史から見れば、“ごく最近”です。

しかし、そのホモ・サピエンスも、突如として誕生したわけではありません。初期生命から現在へと連綿と続く進化の果てに、生まれたのです。私たち「ホモ・サピエンス」という一つの種に絞って、その歴史をたどってみたら、どのような道程が見えてくるでしょうか。そんな道のりを、【70の道標(みちしるべ)】に注目して紡いだ、壮大な物語です。

この『サピエンス前史』から、70の道標から、とくに注目したい「読みどころ」をご紹介していきましょう。今回は、はじめに獲得したヒトという生物に特徴的な器官は何だったのか、ホモ・サピエンスへの旅の第一歩をたどってみます。

【書影】サピエンス前史

*本記事は、『サピエンス前史 脊椎動物から人類に至る5億年の物語』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

獲得した眼には、どんな世界が映ったのか

神が天地を創造したとき、神ははじめに「光あれよ」と言われ、光ができたという。

これは、『旧約聖書』の書き出しだ。

科学の視点で宇宙の歴史をみれば、私たちが暮らす地球よりも、太陽の形成時期のほうが早い。つまり、地球が形成されたとき、地球はすでに太陽光によって照らされていた。

光は、世界を照らす。

そして、照らされた世界を「見る」ための器官といえばーー「眼」である。

知られている限り最も古い脊椎動物が登場したとき、その動物はすでに「眼」をもっていた。その能力についてはよくわかっていないけれども、光を感知することはできたはずである。

知られている限り最も古い脊椎動物は、「古生代カンブリア紀」と呼ばれる時代の半ば、今から約5億1500万年前に出現した。

その脊椎動物は、2種類。名前を「ミロクンミンギア(Myllokunmingia)」と「ハイコウイクチス(Haikouichtys)」という。この2種類は、俗に「無顎類(むがくるい)」と呼ばれるグループに分類される。文字通り「顎あごのないサカナ」たちである。

【イラスト】ミロクンミンギアミロクンミンギア 無顎類。中国に分布するカンブリア紀の地層から化石が発見された。物語のはじまりは、このサカナから…… illustration by hidenori yanagisawa

ともに似たようなサイズで、似たような姿ーー全長2〜3センチメートルほどと小さなサイズで、「サカナ」とはいっても、胸鰭や尾鰭など、水中を効率よく動き回るための器官を欠き、また鱗(うろこ)もなかった。

歯もない。食事の際は、口の中に入った水から、有機物を濾こしとるだけだ。獲物を かみ砕くだくような、そんな動作とは無縁である。

一見して“弱々しい”。

しかし、眼はあった。ミロクンミンギアにも、ハイコウイクチスにも、その化石に二つの眼が確認されている。脊椎動物の歴史が始まった時、その最初から「眼」があった。「世界を視る」ということは、原初からつきあいのある“特徴”なのである。

この2種類よりも1000万年ほどのちに現れた「メタスプリッギ(Metaspriggina)」も似たようなものだ。胸鰭や尾鰭などの鰭を欠き、鱗も、顎も歯もない。しかし二つの大きな眼があった。

脊椎動物の歴史が始まった時、その最初から「眼」があった。「世界を視る」ということは、原初からつきあいのある“特徴”なのである。

「眼」は、最初の道標

私たちは、「ホモ・サピエンス(Homo sapiens)」という一つの種だ。

ホモ・サピエンスは、現在の地球に生き残っている唯一の「人類」である。

ちょっと進化の流れをさかのぼってみよう。

人類は、「霊長類」という、より大きなグループの一員である。霊長類には他に、いわゆる「サル」と呼ばれる動物たちも含まれている。

霊長類は、「有胎盤類」の一員である。有胎盤類は文字通り「胎盤」のある動物たちで構成され、「真獣類」という言葉とほぼ同義だ。有胎盤類には、イヌやネコの属する「食肉類」をはじめ、ネズミなどが属する「齧歯類(げっしるい)」、鯨などが属する「鯨類(げいるい)」なども含まれる。

有胎盤類は、カンガルーなどが属する「有袋類(ゆうたいるい・後獣類)」、カモノハシが属する「単孔類(たんこうるい)」とともに、「哺乳類」をつくる。現生の哺乳類は、この3グループだけから構成されているけれども、過去においては、この3グループ以外にも多くの哺乳類グループが存在した。

【写真】哺乳類の構成霊長類や鯨類を含む有胎盤類は、有袋類(ゆうたいるい・後獣類)や単孔類(たんこうるい)とともに、「哺乳類」をつくる phoytos by gettyimages

哺乳類は、より大きな「単弓類(たんきゅうるい)」というグループの一員であり、そして、唯一の生き残りでもある。こちらも、過去においては、他にも多くの単弓類グループが存在した。

単弓類は、両生類、爬虫類などとともに「四足動物」をつくる。文字通り、「4本の足(脚)」をもつ動物である。そして四足動物と「サカナ」(いわゆる「魚類」)で、「脊椎動物」をつくる。こちらは、簡単にいえば、「背骨をもつ動物」だ。

ミロクンミンギア、ハイコウイクチス、メタスプリッギナが人類の“直接の祖先”である可能性は高くない。しかし、おそらく、きっと、似たような姿の「サカナ」を始祖として、長い進化の果てに人類が誕生した。

長い進化の道程で、ホモ・サピエンスは多くの動物たちと分かれ、特定の形質を獲得し、あるいは、失ってきた。そして、私たちヒトーーホモ・サピエンスに至るまで、祖先がたどってきた物語を紐解いていったときに、サカナがすでに備えていた「眼」は、最初の道標である【第1の特徴】なのだ。

次なる道標は、古生代シルル紀の古生物に確認できる【第2、第3の道標】だ。眼の次に得たホモ・サピエンスに特徴的な器官とはなんだろう?

 

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