08.29
美容医療「合併症に対応できない医師や施設」報告相次ぐ重篤なケースも、専門医未取得では対応できず
厚生労働省の「美容医療の適切な実施に関する検討会」が8月26日開かれ、違法性が疑われる事例に関するヒアリングが行われた。関係学会からは「治療を行った施設が合併症に対応できていないとの相談事例が多々存在する」「密室で説得され120万払ったというトラブルが寄せられている」などの声が上がった。都市部の保健所からは、医師以外による医行為や無診察での治療の疑い事例がある一方、どういう場合に介入できるのか判断が難しいといった指摘があった。同検討会は今後もヒアリングを続けて課題を整理した上で、対応を協議する(資料は、厚労省のホームページ)。
「ほくろ切除1980円~」のはずが120万円に
診療所の美容外科医師の推移や美容医療による危害の相談件数などが示された第1回に続き、より具体的な事例について報告があった。
日本形成外科学会(JSAPS)の貴志和生理事長は、臨床研修の修了後すぐに美容医療に従事する、いわゆる「直美(ちょくび)」について、「憂慮すべき問題」と強調。その理由として、(1)専門医制度でのシーリングの効果が薄れる、(2)軽微から重篤なものまで、合併症について、治療した施設で対応できていない――の2点を挙げた。特に合併症を巡っては「ショックや感染症、失明、組織壊死など重篤なものから、傷跡、炎症、色素沈着などさまざまで、対応できる医療レベルに達するには解剖学、病理学、創傷治癒学などの知識と実体験が必要だが、直美などの形成外科・皮膚科の専門研修を受けていない医師には対応できない。施術者の専門性の欠如が大きく関与している」と問題視した。
日本皮膚科学会の渡辺大輔理事は、これからサブスペシャルティを決める若手医師で、保険診療も含む「美容・レーザー」の希望者が多いことを報告。その上で、「合併症の発症後に相談に乗ってもらえなかった」「『ほくろ切除1980円~』の広告を見て受診したところ、密室で説得され120万払った」など、学会に寄せられたトラブル事例を挙げた。
形成外科医や皮膚科医が在籍し美容医療を手がけるグリーンウッドスキンクリニック立川(東京)の青木律院長は「患者が情報得る手段が安易で、医師の診察よりもインフルエンサーの発信が信用されてしまう。美容医療が医療行為に含まれるという認識がない」と指摘した。
保健所、無資格での医行為や無診療での治療の疑いも
厚労省は、美容外科に従事する医師数が多い都市部の保健所へのヒアリング結果を公表。保健所が把握している事例として、「カウンセラーなど医師以外の無資格者が施術内容の決定や医療脱毛などの医行為を実施している疑い」「医師の診察や指示なしに看護師等が脱毛等の医行為を実施している疑い」「医師が診察する前に治療内容が決定し契約が締結されるなど、無診察治療の疑い」などが挙げられた。
一方、違法、または不適切な疑いのある美容医療に対し、「保健所が専門的知識を持ち合わせていないため、どのような場合に立入検査できるのかが明確になっていないため判断が困難」「診療録に確認したい事項が記載されていない」「医療法第25条を根拠に資料を求めても虚偽報告や聴取拒否される事例がある」といったことが障壁になっていることがわかった。
新宿区保健所の宮沢裕昭氏は「明らかに違法だとわかれば、我々も立ち入りしやすい。HIFU(高密度焦点式超音波)のように厚労省が通知を出すと、保健所は対応できる」「立ち入りした際、カルテに誰がカウンセリングをして、どんな処置をしたのかまで細かく書いてあることは少ない」と述べた。
カウンセラーが事実上診療内容決めるケースも
他の委員からは「カウンセラーが最初に診療内容を決めてしまって、最後に医師が現れてファイナルアンサーをするだけのインフォームド・コンセントがある」「最近は患者にまずアンケートを書かせ、何を希望するか丸を付けさせる場合もある。気軽に項目に丸を付けてしまうと、後になって『患者が希望した』と言われてしまう」といった実態も報告され、共立美容外科の久次米秋人理事長は「そもそもこういったカウンセラーの制度を廃止しないと現状を打破できないのではないか」と厳しい意見を述べた。
情報源: 医療維新 | m3.com
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