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医師の「若手時代は専門性を追求し、高齢になると総合的な診療を行う」との特性踏まえたリカレント教育など研究—日本専門医機構・渡辺理事長 | GemMed | データが拓く新時代医療
医師には「若手時代は専門性を追求する」が、「高齢になると総合的な診療を行う」という特性・2面性がある。この点を
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医師の「若手時代は専門性を追求し、高齢になると総合的な診療を行う」との特性踏まえたリカレント教育など研究—日本専門医機構・渡辺理事長
2025.7.23.(水)
医師には「若手時代は専門性を追求する」が、「高齢になると総合的な診療を行う」という特性・2面性がある。この点を踏まえて「総合的な診療を行う」際に必要となるリカレント教育・リスキリング教育の実施に向けた研究を進めている—。
あわせて、「Generalist」として活躍する医師(総合診療医や一般内科医、救急科医師のほか、高齢になって総合的な診療を行う医師など)と、「Specialist」として活躍する医師とが、どれほどの数・割合で必要となるのかを探る研究も進めている—。
日本専門医機構の渡辺毅理事長(地域医療振興協会東京北医療センター顧問、福島県立医科大学名誉教授)と齊藤光江副理事長(順天堂大学医学部乳腺腫瘍学特任教授)が、7月22日の定例記者会見でこうした点を明らかにしました。

7月22日の定例記者会見に臨んだ日本専門医機構の渡辺毅理事長(地域医療振興協会東京北医療センター顧問、福島県立医科大学名誉教授)
広範な領域について「緊急を要するか?専門医への紹介が必要か」を判断できる能力が必要
2018年度から「新専門医制度」が全面スタートしています。従前の専門医制度に対する「各学会が独自の基準で専門医を認定するため、国民に分かりにくく、質が担保されていない」などの批判を踏まえ、「日本専門医機構と各学会が共同して研修プログラムを作成し、認定を行う仕組み」「医師の地域偏在を助長しない(東京など大都市部での専門研修を希望する医師が多いため)よう、エビデンスに基づいた地域・診療科ごとのシーリング(専攻医採用数の上限)を設ける仕組み」へと改められています。
ただし「専門医の質を追求するあまりに養成施設の要件が厳しくなり、地域間・診療領域間の医師偏在が助長されてしまうのではないか」との不安が医療現場や自治体にあることから、▼日本専門医機構▼学会▼都道府県▼厚生労働省—が重層的に「医師偏在の助長を防ぐ」仕組みが設けられています。
この「医師偏在の助長を防ぐ」仕組みの1つに「地域・基本領域ごとの専攻医採用数に上限を設ける」仕組み【シーリング】があり、現在は▼都道府県別・診療領域別必要医師数を勘案した上限とする▼医師少数区域での一定期間の研修(=勤務)を推進するための【連携プログラム】、【特別地域連携プログラム】設置を可能とする—といった形となっています(関連記事はこちら)。ただし、この仕組みも完璧ではなく、現在「シーリング制度の見直し論議」が厚生労働省の医道審議会・医師分科会の「医師専門研修部会」で進められています(関連記事はこちら)。

現行のシーリングの概要(医師専門研修部会3 241213)

日本専門医機構の提唱する2025年度シーリング案の全体像(医師専門研修部会3 240719)
このシーリングは都道府県別・診療領域別に設定されています(医師の少ない地域・診療領域には設けられていない)が、医師には、例えば「若い頃には特定の専門領域を深く追求するが、年齢を経るにつれて、広い領域、さらには総合的な診療に携わる」ケースが少なくありません。例えば、外科専門医は若い頃にはバリバリ手術をこなすが、年齢を経た暁には「メスを置いて、総合的な診療に携わる」といったケースです。
このように医師には、若い頃には「専門領域を追求する側面」があるものの、高齢になってからは「総合的な診療を行う側面」の2面があります。齊藤副理事長は「総合的な診療を行うにあたって必要となる知識・技術を学ぶためのリカレント教育・リスキリング教育の教材作成などを始めている」ことを明らかにしています。例えば広範な領域について「緊急を要する状態なのか、待てる状態なのか」「自身で診療を行えるのか、他の専門医等に紹介すべきなのか」を判断できる能力を育成するための教育が必要になると斉藤副理事長はコメントしています。
また渡辺理事長・齊藤副理事長は「医師の2面性」に着目し、診療領域とは別に「Generalistとして活躍する医師」(患者の全身を見る総合診療医や一般内科医、救急科医師のほか、上記の高齢になって総合的な診療を行う医師もここに含まれる)と「Specialistとして活躍する医師」(臓器別、機能別(免疫機能など)に診療を行う医師)とが、どれほどの数・割合で必要となるのかを探る研究を始めたことも明らかにしました。
シーリングのベースとなる都道府県・診療領域別の必要医師数は、例えば「東京都の内科では●人」などと計算されます。
しかし、専門医機構が研究を始めたGeneralist医師・Specialist医師の必要数などは、これとは違う形で計算されることになりそうです(1人の医師が若い頃はSpecialist医師として活躍するが、高齢になるとGeneralist医師となる)。このGeneralist医師・Specialist医師必要数に係る研究の中間報告が9月20日開催予定の日本専門医機構シンポジウムで行われる見込みです。
この研究が、上述した「総合的な診療を行うためのリカレント教育・リスキリング教育」にも活かされると期待されます(例えば「●●領域の専門医は、◆歳頃から、専門領域とは別に総合的な診療にも従事するようになる」との知見が明らかになれば、その年齢を見据えてリカレント教育・リスキリング教育の講座受講を勧奨することで、円滑に「総合的な診療」に従事することが可能になる)。この点について齊藤副理事長は、少しざっくばらんな言葉で「つぶしの利く専門医を養成する」とコメントしています。上述のように、例えば外科医では「高齢になってメスの切れ味に自信がなくなってきたとしても、リカレント教育・リスキリング教育を経て『総合的な診療能力』を身につけ、地域住民の『かかりつけ医』として重要な役割を果たしてもらう」といったイメージです。専門医資格の認定・更新だけでなく、「医師の生涯」を見た活動にも日本専門医機構が目を向けていることが分かります。
あわせて、Generalist医師・Specialist医師必要数に係る研究から「●●領域では集約化が必要であるが、◆◆領域では均てん化をさらに進める必要がある」などの知見も明らかになる可能性があります。こうした知見をベースに「シーリングの見直し」が行われることもありそうです。今後の動きに注目が集まります。
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