07.24
地球の自転速度が急上昇、7月10日は今年最も短い1日だった 「マイナスうるう秒」の導入も?(ナショナル ジオグラフィック日本版) – Yahoo!ニュース
北半球では今、人々が夏の長い日照時間を満喫しているが、多くの人が気づいていない事実がひとつある。現代的な方法で時間を測るようになって以来、1日の長さが特に短い日々を経験していることだ。なかでも20
情報源: 地球の自転速度が急上昇、7月10日は今年最も短い1日だった 「マイナスうるう秒」の導入も?(ナショナル ジオグラフィック日本版) – Yahoo!ニュース
原因は不明、8月5日も歴史的に短い日になる可能性 原子時計を採用した1955年以降

イランの火山、ダマーバンド山の斜面に咲く野生の赤いケシの上に広がる星の軌跡。長時間露光を用いることで空に描き出される円形の軌跡は、地球が自転している証だ。(PHOTOGRAPH BY BABAK TAFRESHI)
北半球では今、人々が夏の長い日照時間を満喫しているが、多くの人が気づいていない事実がひとつある。現代的な方法で時間を測るようになって以来、1日の長さが特に短い日々を経験していることだ。なかでも2025年7月10日は今年最も短い日となった。 ギャラリー:この世の果て? 地獄のような地球の絶景 写真12点 原因は地球の自転速度の上昇だ。国際地球回転・基準系事業(IERS)および米海軍天文台によると、この日は標準的な1日よりも1.38ミリ秒短かったという。さらに7月9日と22日も短く、8月5日も歴史的に短い1日になると予想されている。 地球の自転速度が変動するのは珍しいことではない。だが、最近急激に速度が上がっている理由については、はっきりとしたことはわかっていない。 「過去10年間、1日の平均的な長さはおおむね短くなってきています。特に過去5年ほどはその傾向が顕著で、1日が24時間に満たないこともありました」と、米海軍天文台地球姿勢部門の天文学者ニコラス・スタマタコス氏は言う。 そこで、地球の自転が速くなっている理由、わずか数ミリ秒が重大な影響を及ぼす可能性について、専門家に聞いた。
なぜ自転は速くなっているのか
地球の自転速度を変動させる要因は複雑だが、特に重要なものがいくつかある。 地球の周りを周回する月からの影響は、状況に応じて変化する。月に2度、月が赤道に近づくときには、引力によって地球の自転速度がわずかに落ちる。一方、月に2度、月が極地に近づくときには、地球の自転速度はわずかに速まる。 地球と大気は同調して回転し、運動量を共有しているため、どちらか一方の運動量だけを変えることはできない。たとえばジェット気流の変動により、夏の間、大気の回転速度は普段よりも遅くなる。すると、全体の運動量を保つため、地球は自転速度を速める必要に迫られる。 地球の内部でも、物理学者が完全には説明できない奇妙な現象が起きている。何らかの理由から、地球の核は過去50年にわたって速度を落としており、運動量を保つために、上部にある固体部分が回転速度を少し速めてその分を補っている。 「なぜこんなことが起こっているのか、将来的に核がどうなるのかは、わかっていません」と、米スクリップス海洋研究所の地球物理学者ダンカン・アグニュー氏は述べている。
太古の昔には1日が21時間だったことも
原子時計による時間管理が始まった1955年以降、特に短い日がここ数年の間に何度か記録されている。だが、その短さは、地球史上最も短い日にはとうてい及ばない。 平均して、地球の1日は、数十億年にわたって徐々に長くなっている。月が形成されて以来、その引力と潮汐の影響が、地球の自転速度を遅くしてきたためだ。 恐竜時代末期の貝殻の分析によると、7000万年前の1年は372日で、1日の長さはわずか23.5時間だった。約4億3000万年前の化石化したサンゴを見ると、当時は1日が21時間しかなかった。 長期的には1日が長くなる一方で、短期的な変動によって、「短い日が出現する期間」がたびたび訪れている。「1820年代や、1865年から80年頃にかけて見られたそうした期間の”短い日”に比べれば、今年の夏に出現する”短い日”は長い方なのです」とアグニュー氏は言う。「IERSによると、2022年の6月と2024年7月にも、標準より短い日がありました」
人は自転が速くなったことに気づくのか
夏至前後のように日照時間が長くなるのであれば、その事実はだれの目にも明らかだ。 しかし、地球の24時間のサイクルがほんの一瞬短くなったとしても、人がそれに気づくことはないだろう。目の瞬きにかかる時間は100〜400ミリ秒だが、通常の日と短い日との差は、わずか1ミリ秒に過ぎない。 「ごくたまに、1日だけ日が短くなったとしても、それを重視するのは天文学者などの専門家だけです」と、米国立標準技術研究所(NIST)の特別研究員で物理学者のジュダ・レビン氏は言う。天文学者は、天体の位置や動きを理解するために、厳密に時間を計測する必要がある。小さな矛盾が大きなエラーにつながることもあるからだ。 1日が長くなるせいで生まれる時間のズレが積み重なってきた場合には、追加で1秒を挿入して、遅れていた天文時を再び原子時に合致させる。この調整は「うるう秒」と呼ばれ、1972年以降、ほぼ1年半ごとに実施されてきた。
「壊滅的な影響が出るおそれがあります」
地球の自転のわずかな変化が重視されるようになったのは、1955年に原子時計による時刻管理が始まったときだ。原子時計は一定の速さで進み続けるため、地球の自転速度が変化すれば、天文時との間にズレが生じる。 天文時を原子時に追いつかせるうるう秒は、1972年以降、27回にわたって挿入されてきた。現在、地球の自転速度が上がっていることから、天文時を遅らせるために、2029年までに史上初となる「マイナスのうるう秒」が適用される可能性が出てきている。 うるう秒はこれまでに、コンピューター、GPS、通信システムに多大な影響を及ぼしてきた。特によく知られているのは、2012年にLinuxをはじめとするさまざまなシステムが、うるう秒の調整で不具合を起こした事例だ。 前例のない「マイナスのうるう秒」の実施は、それに輪をかけた混乱をもたらすかもしれない。ソフトウェアのシステムが、時間は常に同じ方向にしか進まないと判断する可能性がある。「タイマーやスケジューラーに依存しているソフトウェアには、壊滅的な影響が出るおそれがあります」と、米メタ社のエンジニアは警告する。
気候変動で遅くなっているはずなのに
氷の融解、海面上昇、地下水の枯渇といった要因が、地球の質量をより赤道付近に偏らせ、自転速度を遅くしていることは、さまざまな研究によって示唆されている。これはちょうど、アイススケーターが頭上に上げた腕を下げることで回転を遅くするのと同じ理屈だ。 歴史的に、こうした変動は自然のサイクルの結果として起こってきたものだが、NASAが資金を提供した2件の研究によって、気候変動がもたらす影響が天文時に及んでいる可能性が示された。 「われわれの分析からは、過去100年の間に、現代の気候変動のみの影響によって、1日の長さが約0.6〜0.7ミリ秒延びていることがわかっています。また、その増加率は今世紀中に現在の2倍になる可能性が高いと言えます」と、米ジェット推進研究所の地球システム科学者スレンドラ・アディカリ氏は言う。 こうした減速は、近年地球の自転を速めている要因と相反する可能性があり、地球の自転がいかに複雑なものかが改めて浮き彫りになる。 地球の自転は昔から変動を繰り返してきたものの、多様な原因が絡み合っているため、その仕組みの解明は未だに困難であるとスタマタコス氏は主張する。 「6カ月以上先の1日の長さを正確に予測することは不可能です」と氏は言う。 つまり、太陽は明日も昇るだろうが、その1日が正確にどのくらいの長さになるのかを断言するのは簡単ではないということだ。
文=Brian Handwerk/訳=北村京子
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