2025
11.05

コラーゲンスティミュレーター「異物肉芽腫」117ケースの実際とは?心配される副作用の報告、非吸収性製剤で多発し、最長15年後に発症も、中国の研究チーム「世界初」として発表 | ヒフコNEWS

PODCASTネタ

顔のボリューム回復や肌の再生を目的に用いられるコラーゲン刺激型のフィラー。その副作用として注入後に発生する「異物肉芽腫」のリスクに関する論文をまとめた「世界初」の系統的なレビューが報告された。

情報源: コラーゲンスティミュレーター「異物肉芽腫」117ケースの実際とは?心配される副作用の報告、非吸収性製剤で多発し、最長15年後に発症も、中国の研究チーム「世界初」として発表 | ヒフコNEWS

注射の影響。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

注射の影響。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

顔のボリューム回復や肌の再生を目的に用いられるコラーゲン刺激型のフィラー。

その副作用として注入後に発生する「異物肉芽腫」のリスクに関する論文をまとめた「世界初」の系統的なレビューが報告された。

中国の四川大学の研究チームが2025年10月、美容皮膚科誌に論文を発表した。

※異物肉芽腫(いぶつにくげしゅ)は、異物に皮膚の細胞が反応して異常に増殖したもの。

発症は平均1年8カ月後

フィラー注射は合併症を起こすことがある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

フィラー注射は合併症を起こすことがある。写真はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 研究の概要 → コラーゲンスティミュレーター(PLLA、PCL、CaHA、PMMAなど)による異物肉芽腫の症例を対象に、40件の論文・117人分を分析。世界初の系統的レビューとして報告。
  • 発症状況 → PMMA(35.0%)、PLLA(30.8%)、CaHA(27.4%)で多発。主な症状はしこり(82.9%)、腫れ(9.4%)、硬結(3.4%)。発症部位は口周囲が最多(約31%)。
  • 治療法 → 主にステロイド注射(21.4%)、外科的切除(15.4%)、レーザー治療(4.3%)など。改善・消失は全体の約4割にとどまり、再発例も多い。

コラーゲン刺激型のフィラーは、用途によって呼び名が使い分けされることもあるが、コラーゲンスティミュレーター、スキンブースター、コラーゲンブースター、バイオスティミュレーターなどと呼ばれている。こうした肌の内部を刺激する注入製剤が注目されている。以下、コラーゲンスティミュレーターと呼ぶことにする。

そのメリットは、名前の通り、皮膚の内部を刺激することで、コラーゲンの増殖を促すことだ。ボリュームアップ効果によって、シワやたるみの改善が期待されている。

一方で、皮膚に炎症を起こすなど、副作用の懸念もある。

研究チームは、2024年8月までに報告された関連研究を調べて、40件の論文を抽出し、117人(女性109人、男性8人)のケースについて分析した。これは系統的レビューと呼ばれる手法で、研究チームによると、コラーゲンスティミュレーターの異物肉芽腫について確かめた世界でも初めての研究だという。

分析の対象になった製剤は、ポリ-L-乳酸(PLLA)、ポリカプトラクトン(PCL)、カルシウムハイドロキシアパタイト(CaHA)のほか、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、デキストラン、ポリビニルアルコール(PVOH)。

結果として、報告されたケースの中で最も多かったのはポリメチルメタクリレート(35.0%)。次いでポリ-L-乳酸(30.8%)、カルシウムハイドロキシアパタイト(27.4%)も多かった。

症状は、しこり(82.9%)、腫れ(9.4%)、硬くなる状態(3.4%)などが多く、口の周り(約31%)に最も多く見られた。

発症までの期間は最短1週間で、最長15年(平均20.18カ月)と幅があった。ポリメチルメタクリレートは平均35.3カ月と遅れて発症する場合が目立った。

すべてのタイプのコラーゲンスティミュレーターで肉芽腫が報告され、PMMAなど非吸収性製剤では発生率が高く、症状が長期化しやすいと結論づけられた。

治療として最も多く行われていたのは、副作用が起きた部位へのステロイド注射(21.4%)で、外科的切除(15.4%)やレーザー治療(4.3%)なども報告された。症状が軽くなったり、消失したりした例は全体の約4割にとどまり、再発しこりが再発したり完全に消失しなかったりする例が多かったことも指摘された。

非吸収性フィラーで発生率高く、治療は難航

以前の論文より。首に出現したPLLA(Elleva)によるしこりとその超音波の画像。(出典/J Cosmet Dermatol. 2024;23:2829-2835.)

以前の論文より。首に出現したPLLA(Elleva)によるしこりとその超音波の画像。(出典/J Cosmet Dermatol. 2024;23:2829-2835.)

  • 過去の報告との共通点 → 2025年5月のヒフコNEWSで紹介された論文でも、最も多い副作用は「しこり」。発症は1カ月以上経過してからが多く、今回の中国研究と一致。
  • 改善率 → 合併症が起きた症例のうち、約3分の2では改善が見られなかったと報告されており、今回の結果とも近い傾向。
  • 成分確認の重要性 → 同じ成分でも複数の商品が存在し、商品名だけでは成分を特定できない場合がある。施術を受ける際には、使用される製剤の成分名を確認することが重要。

ヒフコNEWSは2025年5月に、バイオスティミュレーターの副作用を報告した論文を紹介している。

その際に、最も多いと報告されたのは、しこりだった。発症は1カ月以上経ってからのケースが多いのが特徴で、今回の中国の研究チームの報告と同様だ。

合併症が起きたときに、改善が見られないケースが3分の2あったと報告されていたが、それも今回の中国の報告に近い割合といえる。

コラーゲンスティミュレーターを受けるか検討する場合には、このような副作用の存在について認識することは欠かせないだろう。

また、今回の研究では、成分名で検討されているが、同じ成分でもさまざまな商品が存在している。商品名だけでは成分を特定できない場合がある。今回の研究で分かるように、副作用につながりやすい成分が存在している。施術を受ける際には、商品名だけではなく、その成分が何であるかを確かめることも重要だろう。

参考文献

Wang H, Wu D, Lo C, Liu S, Ji Q, Reem AA, Qiu H. Foreign Body Granulomas Reaction Related to Collagen Stimulatory Cosmetic Fillers: A Systematic Review. J Cosmet Dermatol. 2025 Oct;24(10):e70459. doi: 10.1111/jocd.70459. PMID: 41132036; PMCID: PMC12550546.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41132036/

バイオスティミュレーターによる合併症への新たな対策、しこりを「溶かす」技術に注目、PCL製剤の症例で検証、シンガポールの医師が美容皮膚科誌に発表
https://biyouhifuko.com/news/research/12702/

バイオスティミュレーター、合併症の6割が1カ月以降に出現、顔面・しこりが最多、治療成功は1割未満、製剤増加の中で安全性の情報蓄積は急務に
https://biyouhifuko.com/news/research/12074/

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