02.15
兵庫・無資格の美容施術を摘発、「名義貸し」「法律違反」…“偽クリニック”手口明るみに、摘発の波は全国へ広がるのか、行政指導や処分も無視する厚顔無恥な実態【編集長コラム】 | ヒフコNEWS
兵庫・無資格の美容施術を摘発、「名義貸し」「法律違反」…“偽クリニック”手口明るみに、摘発の波は全国へ広がるのか、行政指導や処分も無視する厚顔無恥な実態【編集長コラム】
情報源: 兵庫・無資格の美容施術を摘発、「名義貸し」「法律違反」…“偽クリニック”手口明るみに、摘発の波は全国へ広がるのか、行政指導や処分も無視する厚顔無恥な実態【編集長コラム】 | ヒフコNEWS
これまでも外国籍の人物が無資格で美容施術を行い、摘発されたケースはあったが、今回の事例は、日本人が関与し、しかも堂々と施設を構え、美容施術を提供していた点で異質な事件といえる。
しかし、一般にはまだあまり認知されていないものの、日本には、医師の関与が乏しい、または関与のない施設の問題が多数存在する可能性があり、この事件は全国的な問題の一面を示しているといえる。
未承認の薬を無資格で使う

摘発された「美滴+クリニック」のウェブサイト。名称は変更されている。(出典/BITEKIPLUSウェブサイト)
まず、今回の事件はどのようなものだったのか。
既にヒフコNEWSで速報したが、もう少し詳しく見ていく。今回、摘発された施設名は「美滴+クリニック」だが、2025年2月時点のウェブサイトを見ると「BITEKIPLUS」と名称が変わっている。摘発された施設と住所は同一で、「ビテキ」の名前に共通点もあるため、同じ施設と考えられる。
この施設のウェブサイトを見たのが上の画像だ。これを見ると、その見た目は通常の美容クリニックといわれても違和感のない内容になっている。
「BITEKIPLUSについて」のページを開くと次のように記されている。
BITEKIPLUSは、美容点滴というインナーケアに真摯に取り組み、皆様に細胞レベルでの美しさと健康をお届けしたいと心から願っています。再生・予防医療に特化し、関西初の美容点滴専門店としての自負と誇りを胸に抱いています。現在、高価な美容点滴が市場に溢れる中、私たちは社会貢献をモットーに掲げ、ハイクオリティかつ良心的価格での提供に挑戦し続けています。皆様に安心感を提供し、低価格と最高品質を両立させることが私たちの使命です。
大きなことを書いているが、医師不在であることを考えれば大きな違和感のある内容だ。例えば、「再生・予防医療に特化」と記載するのは、あり得ないことだろう。
施術メニューを見ると、美容クリニックで提供される美容施術と変わらない内容だ。

医師不在であるにもかかわらず、美容クリニックで提供される施術名が並んでいる。(出典/BITEKIPLUSウェブサイト)
例えば、白玉点滴(グルタチオン)、シンデレラ点滴(リポ酸)、エクソソーム点滴、NMN点滴、水光注射(リジュランやジュウベルック、成長因子など)、フォトフェイシャル、アートメイクなど。エクソソームを用いた点滴である「リバースエイジング療法」は、施術料が40万円と特に高額であると見える。
そもそもこの施設自体が違法であるが、その実態は極めて悪質だ。例えば、しこりの問題が指摘されている未承認の成長因子を、水光注射で医師不在の施設が使用していたとすれば、安全性の問題だけでなく、未承認薬の使用という観点からも、医師法および薬機法に違反する可能性がある。
問題は2023年10月から始まった

神戸市は2024年9月、今回逮捕されたクリニックに行政処分を下した。(出典/神戸市)
なぜ、これほどまでに異常な事態が発生していたのか。
この問題は2023年10月から始まっていた。2024年9月には、神戸市は、「美滴+クリニック」を運営していた一般社団法人めぐみ会に対し、行政処分を行い、それを公表していた。
- カルテ記載の不備などの法令違反
- 医師による名義貸し
神戸市は、医師と、実質的な経営者として疑われた2025年逮捕の母娘に対し、「管理運営体制等を是正するよう行政指導」を実施。その指導中の2024年4月に診療所廃止届が提出された。この時点で医師は離脱したと見られる。
その後、母が一般社団法人めぐみ会を設立し、自由診療の訪問看護ステーションおよびエステ店として「美滴+クリニック」を運営し続けた。
これに対しても、神戸市は問題視し、さらに、無許可での医療行為を実施している点や診療所でないにもかかわらず「クリニック」と名乗っていることも、医療法上の虚偽広告であると問題視した。
ところが、後に逮捕される母は「提携しているクリニックがオンライン診療をしているため、違法ではない」と主張し、是正に応じなかった。
結果、神戸市は医療法に違反し、運営が適正でないという判断から、めぐみ会に対して、「改善措置命令」の行政処分を行った。
こうした経緯から、当初からルールを逸脱した状態でクリニックが開設され、医師には名義貸しの疑いがあり、実質的な経営者が無資格で医療行為を提供し続けていたことが分かる。
兵庫県警の摘発は他の地域にとって前例に

カウンセラーや受付スタッフが診察や施術を行う違法行為が行われている。(出炭/厚生労働省)
「一般社団法人」「医師の名義貸し」「法律違反」「行政処分」と、無秩序な運営が続く中で、最終的に逮捕に至った。
こうした問題は、日本全国に広がっている可能性がある。
2024年の厚生労働省「美容医療の適切な実施に関する検討会」でも問題として無資格者の施術が挙げられていた。
点滴を提供する施設のほか、アートメイクの施設や訪問点滴を行う施設などでも、運営体制の適正性が疑われるケースが確認されている。
今回の兵庫県警による摘発は、従来あまり例のない動きと考えられ、他の地域での前例となる可能性がある。行政の判断は、前例があることで動きやすくなるとされる。今後、同様の摘発が他の地域でも行われる可能性がある。
誰が施術できるかなどのルールを分かりやすく
美容医療のトラブルがこれまで問題になってきたが、無資格のいわば“偽クリニック”の存在はとりわけ大きな問題と考えられる。
医療と美容の線引きが曖昧であることも、問題の背景にあると考えられる。
例えば、医師の関わり方についても、医師の指示の下で看護師が美容施術を行うケースが多いが、その際にどのようなルールに従うべきかも明確にする必要がある。2024年6月に、HIFUは医師のみが行えるとの通知が厚生労働省から出されたが、その際に看護師はできるのかという混乱が生じた。その背景には、看護師が行える施術のルールが広く認識されていなかったことも関係していると考えられる。
ヒフコNEWSで記事があるが、医療行為ではない刺青と、医療行為であるアートメイクの違いについても基準が曖昧だという指摘がある。
違法クリニックを生まないためにも、これまでも課題とされてきたルール作りが、引き続き求められるだろう。
一方で、美容施術を検討する際には、このような「偽クリニック」の存在を認識しておく必要がある。今回の事件で問題となったクリニックは、危険なクリニックの典型例といえる施設だった。問題となった点などについては参考にしてよいかもしれない。
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