02.15
見えない美容クリニックの闇、グループの医師が個人事業主に?支配され追い込まれる、東京中央美容外科(TCB)運営が約9億円の追徴課税の報道も、ウルフクリニック倒産では経営破たんの責任を負いかねない事態も【編集長コラム】 | ヒフコNEWS
2025年2月10日、NHKで、国税庁が東京中央美容外科(TCB)に対して約9億円の追徴課税を科したことが報じられた。
国税庁が追徴課税。(写真/Adobe Stock)
2025年2月10日、NHKで、国税庁が東京中央美容外科(TCB)運営の医療法人社団「メディカルフロンティア」に対して約9億円の追徴課税を科したことが報じられた。
これは、同社が院長を個人事業主と位置づけることで、開業から消費税が2年間免除される制度を適用して、本来支払うべき税金を免れたと判断されたため。実際には、院長はTCB運営の「雇われ院長」と位置づけられるべきで、TCB運営が支払うべき消費税を支払わなかったと見なされた。
こうした院長の位置づけは、美容クリニックでは問題になりやすい。これまでは医療脱毛の倒産でよく問題になっていた。
ここではこの仕組みが美容クリニックにどのような影響があるのかを書く。
実質的にグループが運営するが医師に責任の恐れ
安すぎて怪しい?と不安に応えようとしていたが閉院の事態に陥った。出典/ウルフクリニックホームページ
医療法では、病院やクリニックを開設する人は医師でなければならないと定められている。
そのため美容クリニックも例外なく医師が院長を務めなければならない。
ところが、一部の美容クリニックでは、公式サイトや看板などに院長名が記されていないこともある。法律上、院長は必ず医師である必要があるので、院長名がどこにも表示されていないときには、運営に何らかの問題がある可能性があると考えられる。
院長が医師でなければいけないという点が、医師以外のグループによって医療機関が運営される場合に問題になることがある。
例えば、医師以外のトップが経営する会社がバックにいて、複数の医院を展開する際、法律に従って名義上は医師を雇い、その医師が開設者として医院を立ち上げる形を取る。しかし実際には、グループ会社が資金管理などを一手に引き受けているため、医師は経営や運営の実態を十分に把握していないこともある。
このような状態が問題化したのが、クリニックグループが倒産したケースだ。
ヒフコNEWSに寄せられた情報を参考にすると、2023年に男性専門医療脱毛ウルフクリニックの運営会社が倒産した際、医師が思わぬ負担を負わされかねない問題が起きたと見られる。
ウルフクリニックは実質的にTBIという会社が運営していたが、この会社の経営は2023年4月までに行き詰まり、同年6月に裁判所から破産手続開始決定を受けて倒産した。
ウルフクリニックは表面上、各クリニックは医師個人の開設という形式を取っていたものの、実態はTBIが経営を支配していたとされる。問題なのは、医師がこうした運営体制を十分に認識しておらず、資金管理などもTBIに完全に握られていたと見られる点だ。ウルフクリニックが経営破たんした時には、本来であればTBIが負うべき責任が、形式上の開設者である医師に及びそうになり、最終的には、TBIが責任を負ったと見られる。医師は想定外の負債を抱えかねない可能性があった。
消費税の支払い免除にもつながる
NHKで美容医療の問題が大きく取り上げられた。(写真/Adobe Stock)
このように医師が個人で医院を開設し、実質的にグループが支配しているという状況は、今回NHKで報道されたTCBの問題にも通じている。
グループが支配しているにもかかわらず、医師は個人事業者としてTCBのクリニックを運営しているような形にされていたとされる。
医師は事業を開始してから2年間の消費税の免除を受けられるが、その恩恵をグループ支配者が事業開始から2年を超えているにもかかわらず受けていたとしたら問題になる。
このような状況に置かれていた院長はTCBグループを抜け、本当に個人事業としてクリニックを開設した場合に、消費税の免除を受けられないというトラブルが起きていたようだ。
医師が、このようにいつの間にか個人事業主と位置づけられていたことが問題だ。
こうした仕組みを安易に運用していれば、クリニックのグループと医師の信頼を失わせ、医師が日常の施術をよりよくし、グループの提供する美容医療の質を高めようという意識を削ぐものになりかねない。
本来であれば、グループで美容クリニックを運営することで、医療の効率化が図れたり、グループの医師同士が協力することで、医療の効果や安全性を高められることが望ましい。そうしたグループによる運営のメリットこそを、施術を受ける人たちにもたらしていくべきだろう。
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