2024
09.30

新型コロナ「レプリコン・ワクチン」になぜ懸念の声?mRNAが自己増殖し長期間の効果に期待、だが承認は日本のみ 【やさしく解説】レプリコン・ワクチンとは(1/4) | JBpress (ジェイビープレス)

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 新型コロナウイルスの発生状況は現在どうなっているのでしょうか。 新型コロナについては2023年5月から感染症法の扱いが「5類」に変更されたことに伴い、それまでの「全数把握」が中止に(1/4)

情報源: 新型コロナ「レプリコン・ワクチン」になぜ懸念の声?mRNAが自己増殖し長期間の効果に期待、だが承認は日本のみ 【やさしく解説】レプリコン・ワクチンとは(1/4) | JBpress (ジェイビープレス)

高齢者などを対象にした新型コロナワクチンの「定期接種」が2024年10月から始まります。秋からの接種では「次世代型mRNAワクチン(レプリコン・ワクチン)」が使用されますが、このワクチンに対しては一部の医療関係者が使用に懸念を表明しています。いったい、何が問題とされているのでしょうか。接種制度の変更点も含め、やさしく解説します。

フロントラインプレス

いまだ多くの新型コロナ患者が発生

新型コロナウイルスの発生状況は現在どうなっているのでしょうか。

新型コロナについては2023年5月から感染症法の扱いが「5類」に変更されたことに伴い、それまでの「全数把握」が中止に。その代わり、全国5000の医療機関の状況をもとにした「定点観測」へと変わりました。現在では、1医療機関あたりの感染者数の平均値(速報値)が、厚生労働省によって1週間ごとに公表されています。

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 それによると、直近2024年8月19〜16日の全国平均は1医療機関あたり8.80人でした。前週の8.50人より0.30人増。都道府県別では、青森県の17.90人が最多で、全国23の道と県で2桁に達しています。同年7月中旬のピークと比べると減少傾向にあるとはいえ、依然として多くのコロナ患者が発生していることに変わりはありません。

2024年10月から「定期接種」に

新型コロナウイルスのワクチンは、全額を公費負担とする「特例臨時接種」として2021年6月からスタートしました。厚労省のデータによると、2024年3月末までの接種回数は延べ約4億3619万回。全人口に対する1〜3回目の接種率は、80.4%、79.5%、67.1%と高い割合を記録しました。製薬企業の「ファイザー」「モデルナ」といった言葉が、連日のようにニュースとして流れたことを多くの人は忘れていないでしょう。

全額公費負担のワクチン接種は2024年3月末で終了し、2024年10月からはコロナワクチンの「定期接種」が始まります。定期接種とは、季節性インフルエンザのワクチンなどと同じように、費用の一部を利用者が自己負担する接種のことです。対象となるのは、①65歳以上の高齢者、②60〜64歳で重症化リスクの高い人。それ以外の人は完全に「任意接種」となるため、全額を自己負担せねばなりません。

では、接種費用はいくらになるのでしょうか。

厚労省が全国の自治体向けに配布した資料によると、接種1回分のワクチン代は1万1600円程度。それに医師・看護師の「手技料」を加えた費用は計1万5300円程度となっています。厚労省は①と②に該当する利用者の自己負担額を1回7000円と設計しており、その差額は市町村への交付金で賄う予定です。ただし、自治体によっては独自の補助制度を設けているケースも多く、実際の自己負担額はさらに安くなる可能性があります。

定期接種の期間は2025年3月末までで、この間に自治体は接種期間を設定し、希望者にコロナワクチンを接種していくことになります。

この定期接種では、新たに「次世代型mRNAワクチン」も使用されることになっています。「レプリコン(自己増殖型)」とも呼ばれるこの新型ワクチンには、一部の医療関係者などから接種に懸念も示されていますが、いったい、どんなワクチンなのでしょうか。

レプリコン=自己増殖型とは

新型コロナ感染症対策のワクチンとしては、主にmRNA(メッセンジャーRNA)を利用したワクチンが使用され、多くの国民が接種しました。

それまでのワクチンは、ウイルスや細菌などの病原体を弱毒化したり、ウイルスと同じ成分のものを人工的に作ったりしてヒトに接種し、その免疫を体内に作り出す仕組みでした。「不活性ワクチン」「組み換えタンパクワクチン」などが、これに該当する従来型のワクチンです。

図:フロントラインプレス作成
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これに対し、mRNAワクチンは、コロナウイルスの設計図となるmRNAを脂質の膜に包んだものです。これをヒトに注射すると、mRNAに書かれた遺伝情報をもとに体内で新型コロナウイルスのスパイクタンパク質(ウイルスがヒトの細胞へ侵入するために必要なタンパク質)が産出されます。すると、スパイクタンパク質に対する免疫反応などが起き、コロナウイルスそのものが体内に侵入するのを防ぐことができるという仕組みでした。

mRNAを利用した医薬品は、世界の製薬企業による激しい開発競争が続いていますが、コロナワクチンで初めて実用化されたと言われています。

では、2024年10月から使用される「次世代型mRNAワクチン」は、これまでのmRNAワクチンとどこが違うのでしょうか。最大のポイントは「レプリコン(自己増殖)」にあります。

これまでのmRNAワクチンでは、mRNAはヒトの体内でスパイクタンパク質を産出させるとすぐに消えていましたが、レプリコン・ワクチンではヒトに注射すると、そのmRNAが体内で自己増殖を続けます。そのため、「次世代型」ではなく、「自己増殖型(レプリコン)」を頭に付けて呼称することもあります。免疫反応を呼び起こすmRNAが自己増殖を続けるわけですから、少量の接種で長期間の効用が出ると期待されています。

この次世代型mRNAは2023年11月、他国に先駆けて日本で初めて承認されました。2024年8月末現在でも、世界で唯一の承認国です。認可を受けたのは、米国のバイオ企業アークトゥルス・セラピューティクス社が開発したもので、日本では明治ホールディングス傘下のMeiji Seika ファルマ社(東京)が製造・販売権を取得。「コスタイベ筋注用」の名称で販売されます。

Meiji Seika ファルマ社はこのワクチンを福島県南相馬市の施設で生産するほか、2028年の稼働を目指して神奈川県小田原市にも新工場を建設します。「夢の医薬品」と呼ばれた次世代型mRNAワクチンを国内で供給する体制がいよいよスタートするのです。

日本看護倫理学会が表明した懸念の中身

もっとも、レプリコン・ワクチンに対しては、医療関係者からも使用に疑問の声が出ています。その最たるものは、一般社団法人・日本看護倫理学会(理事長=前田樹海=東京有明医療大学教授)でしょう。公表資料によると、同学会は会員数約900人。日本学術会議の協力学術研究団体には含まれていませんが、2008年の発足以来、多様な研究活動を続けています。

同学会は2024年8月7日に「新型コロナウイルス感染症予防接種に導入されるレプリコンワクチンへの懸念 自分と周りの人々のために」と題する緊急声明を発表し、「安全性および倫理性に関する懸念」を表明したのです。5つ示されたポイントのうち、重要なのは次の3点です。

◎レプリコンワクチンが開発国や先行治験国で認可されていないという問題

日本での認可から約8カ月になるが、開発国の米国や大規模な治験を行ったベトナムなど海外では今も承認国が出ていない。この状況は海外で承認が取り消された薬剤を日本で使い続け、多くの健康被害をもたらした薬害事件を想起させる。

◎シェディングの問題

レプリコンワクチン自体が自己複製mRNAであるため、接種者から非接種者に感染(シェディング)するのではないかとの懸念がある。それは接種を望まない人にワクチン成分が取り込まれてしまうという倫理上の問題がある。

◎将来の安全性に関する問題

遺伝子操作型mRNAワクチンは、人体の細胞内の遺伝機構を利用し抗原タンパク質を生み出す技術であり、人間の遺伝情報や遺伝機構に及ぼす影響、とくに後世への影響についての懸念が強く存在する。(最近の研究によると)ヒトの遺伝情報に影響しないという言説は根拠を失いつつある。

また、緊急声明は、従来のmRNAワクチンでは実験段階でも接種段階でも重篤な副作用について接種の際に十分な説明が行われなかったと指摘。コロナワクチンの接種は、インフォームド・コンセント(十分な説明を受け納得したうえでの同意)を基盤とする医療のあり方を揺るがしかねない事態になっていると強調しています。

そして声明は「われわれは、安全かつ倫理的に適切なワクチンの開発と普及を強く支持するものではありますが、そのいずれも担保されていない現段階において拙速にレプリコンワクチンを導入することには深刻な懸念を表明します」と結ばれています。

旧来型のコロナワクチンについても、各地では数多くの副作用や健康被害が報告されました。

厚生労働省の疾病・障害認定審査会(感染症・予防接種審査分科会 新型コロナウイルス感染症予防接種健康被害審査第一部会)の資料によると、予防接種の健康被害救済制度を使ったコロナワクチン接種による健康被害の申告は、2024年6月段階で1万1305件に達しています。この7割近く、7458件が実際に健康被害を認定されました。

2024年10月から始まるコロナワクチンの定期接種でも、接種を希望する人は事前にレプリコン・ワクチンの情報を十分に集め、医師や看護師から副作用に関する説明なども十分受けて、接種するかどうかを判断することが必要になりそうです。

フロントラインプレス
「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo!ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。

 

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