2025
09.29

AIが薬剤耐性菌を殺すウイルスを作る:他人事ではない生物テロ | アゴラ 言論プラットフォーム

PODCASTネタ

9月19日号のNature誌に「World‘s first AI-designed viruses a step towards AI-generated life」というニュース記事が出ている。AIを利用してウイルスゲノムをデザイン、合成

情報源: AIが薬剤耐性菌を殺すウイルスを作る:他人事ではない生物テロ | アゴラ 言論プラットフォーム

9月19日号のNature誌に「World‘s first AI-designed viruses a step towards AI-generated life」というニュース記事が出ている。AIを利用してウイルスゲノムをデザイン、合成し、薬剤耐性細菌を殺す可能性を示した記事だ。

sirawit99/iStock

実際には、バクテリオファージと呼ばれる細菌に感染する物質をAIがデザインし、それを利用して抗生物質などに抵抗性を示す細菌を殺すという話だ。

一般的なウイルスは、細胞などに入り込んで、細胞内で作り出された道具を無断利用して増殖し、最終的には細胞を殺す働きを持っている。コロナウイルスはスパイクタンパクを細胞に取りつく部品として利用し、細胞内に入り込み、増殖して、どんどんと増えていっている。このスパイクタンパクを人工的に作らせ、これに対する抗体を予防・重症化予防に利用するのが、mRNAワクチンの原理だ。コロナウイルスが細胞に取りつく部分(スパイクタンパク)に、抗体が先回りして結合し、ウイルスが細胞に入り込むのを防いでいる。

これを読んでいて思い出したのが、ロンドンに行く機中で見た「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」だ。この映画で登場した「ヘラクレス計画」は、特定の人類のDNAを標的として、特定の人物だけを殺すことのできるナノ兵器だ。ウイキペディアによると「触れた相手を天然痘の症状で殺すことができ、DNAで相手を指定することも可能である」とのことだ。まさに、オーダーメイドのバイオテロの世界だ。

かつて放送されていたスタートレックで(今でも続編があるが)見た非現実的な世界が現実となったわかりやすい例が、携帯電話の世界だ。宇宙船と星に上陸した隊員との通話は、まさに夢だったが、今は、宇宙ステーションと地球上で会話ができる時代だ。

特定の人物を標的にする生物テロはまだまだ先だとは思っているが、一般的な生物テロはウイルスや細菌に感染した人を潜伏期間中に送り込めば簡単にできるし、20年ほど前のNCISという番組ですでにそのような物語があった。炭疽菌テロなども現実に起こった話だ。

話は飛ぶが、NCISに登場する検視担当のダッキーを演じているデビッド・マッカラムは、かつて「0011ナポレオンソロ」というテレビドラマで、イリア・クリアキンという役柄で主役を食ったことで有名な俳優だ。10歳代の話だが、私もイリアの方が好きだった。NCISでもスコットランド訛りの話しぶりが楽しい。

話を戻すと、国家安全保障の観点で生物テロ・バイオテロ対策は非常に重要だ。日本も対策は練っているのだろうが、コロナ感染症時の厚労省委員会でのmRNAワクチンに対するリテラシーの低さを考えると専門家の知識がどれだけ反映された対策を練っているのか心もとない。

科学力の低下が国力の低下につながっていっていることには疑問の余地がないが、総裁選の議論を聞いていても、この国の未来像が伝わってこない。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2025年9月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。