2025
08.19

英国で問題の資格不要の美容施術、日本にも存在する無資格問題、日本では無資格施術・カウンセリング・名義貸しなど横行、被害を防ぐため日本独自の対策も求められる【編集長コラム】 | ヒフコNEWS

PODCASTネタ

このニュースは日本から見ると、状況をうまく理解できないかもしれない。ヒフコNEWSでは、かねてこの動きについて伝えてきたが、あらためて最新の情報を踏まえて解説する。これは日本とも無縁ではない問題といえ

情報源: 英国で問題の資格不要の美容施術、日本にも存在する無資格問題、日本では無資格施術・カウンセリング・名義貸しなど横行、被害を防ぐため日本独自の対策も求められる【編集長コラム】 | ヒフコNEWS

ポイント

  • 英国では資格不要の非外科的美容施術の被害が相次ぎ、規制強化が進められる。
  • 一方、日本でも無資格施術やカウンセリング、違法施設など、無資格問題が横行している。
  • 被害の拡大を防ぐには、存在する課題に合わせた日本独自の対策が求められる。
医療専門職の資格が問われる。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

医療専門職の資格が問われる。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

英国で資格不要の非外科的治療が問題となり、新しいライセンス制度が作られるなど、規制強化が行われる。

このニュースは日本から見ると、状況をうまく理解できないかもしれない。ヒフコNEWSでは、かねてこの動きについて伝えてきたが、あらためて最新の情報を踏まえて解説する。これは日本とも無縁ではない問題といえる。

英国では美容医療の合併症が「自業自得」

医療専門職と美容施術を行える権利。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

医療専門職と美容施術を行える権利。画像はイメージ。(写真/Adobe Stock)

  • 資格不要の実態→フィラー注射など非外科的治療は、医師・看護師・薬剤師だけでなく、エステティシャンなど非医療職も実施。
  • 「無資格」ではなく「資格不要」→制度上、資格なくても違法でなかったが、事故や死亡例が起こり問題視。
  • 合併症対応の問題→英国では美容医療の合併症に一般医療機関が後ろ向きで、「自業自得」と対応を拒否するケースも。

まず英国でなぜ資格不要の美容施術が問題になるのか。

これはそもそも英国では医療費が無料であることが関係している。

英国では、国が運営するNHS(国民保健サービス)が、科学的な根拠に基づき、提供する医療の価値を評価し、命や生活の質を守るのに必要な医療行為を絞り、一般の国民に提供する仕組みを整えている。

こうした制度がある中で、美容医療は、外見を整えるためのものとして、無料で提供される対象ではなく、自由診療で提供されることになる。

この辺りは日本と共通点もあるが、英国の場合、フィラー注射をはじめとした非外科的治療が医師以外にも提供されているところが異なっている。

実態は見えづらいところもあるが、現地の情報を見ていくと、医師や看護師、薬剤師といった医療専門職ばかりではなく、エステティシャンのような非医療職によっても提供されている状況が読み取れる。

そのため、厳密に言えば、英国では「無資格」ではなく、資格が不要な非外科的治療が行われている。

これで問題が起こらなければよいが、実際には事故が続出している。前回の記事で伝えたように死亡例も報告されている。

さらに、英国で問題なのが、美容医療で合併症が起きても、一般の医療機関はその治療に後ろ向きであること。

フコNEWSでは以前に、アラガン・エステティックスのレポートについて記事にしたが、英国の医療機関は、前述のように必要な医療に絞り込んで無料で提供している状態であり、必要とされる医療とは異なる美容医療については、合併症が起きたとしても「自業自得」として冷たくあしらわれ、対応を拒否するケースが少なくないとされる。

日本でも美容医療の合併症の対応については、公的な保険で対処できるのか、自由診療で対応すべきなのかが話題になることがあるが、英国の方が、状況が厳しいともいえる。

こうした中で、英国は、これまで資格がなくても非外科的施術を行える状況を変えることにした。記事で書いたように、リスクが高いものは、医師をはじめ医療専門職のみが、決められた施設だけで行えるようにする。さらに、リスクが中程度や低いケースでも、ライセンスがないと施術を行えないように改めることになる。このように、英国は問題を法律を変えるなどの対策で解決しようとしている。

日本では異なる形で無資格の美容施術が広がる

カウンセラーや受付スタッフが診察や施術を行う違法行為が行われている。(出炭/厚生労働省)

カウンセラーや受付スタッフが診察や施術を行う違法行為が行われている。(出炭/厚生労働省)

  • 無資格施術は世界的問題→英国だけでなく、米国やアジア、日本でも発生している。
  • 国内の事例→一部クリニックで受付やカウンセラーが施術を実施。無資格カウンセラーが施術方針を決定するケースも。
  • 課題→日本では無資格施術はいずれも法律違反だが、対策が追いついていない。被害拡大を防ぐため、英国とは異なる対応策が必要。

このような資格がない者による美容施術の問題は、英国だけに限らない。

これまでにヒフコNEWSは同様な問題が米国やアジアなどでも起きていることを伝えた。日本国内でも英国とは異なる形で、資格を持たない美容施術、またはそれに近い行為が行われていることを報じている。

その一つの例として、医師ではない人による美容施術が行われているケースがある。厚生労働省が2024年に開催した「美容医療の適切な実施に関する検討会」で公表された調査によりデータが公表されている。一部のクリニックで、受付やカウンセラーが、美容施術を行っているケースがあるという内容だった。

また無資格のカウンセラーが美容医療の方針を決めているという動きもかねて問題視されている。

他のケースとしては、名義貸しクリニックでの無資格美容施術も問題になっている。2025年2月には、兵庫県の名義貸しのクリニックで、院長の医師が不在のまま、一般人が看護師に指示し、美容施術をさせているという問題が発覚し、施設が摘発された。

さらに、外国人による無資格の美容施術の問題もある。2025年2月、東京の池袋で、中国籍の家族が資格もないのに注射や二重の手術をしており、被害者を出して摘発された。

このほか、8月には看護師がアートメイクを無資格で提供しているとして、集英社オンラインが報道した。

ここでは深掘りしないが、アートメイクは医師免許を持たない者が行うと問題になるが、施術内容が近い刺青については医師免許を必要としないという制度上の課題が指摘されている。

日本国内ではこのように無資格の美容施術が広がっている。日本ではいずれも法律違反であり、対策が追いついていないといえるだろう。被害を広げないため、英国とは異なる対応が求められる可能性がある。

参考文献

「自業自得」のレッテル、英国美容医療の合併症に対する冷たい対応、美容医療の提供者に自らトラブル対応求める声、アラガンリポートより
https://biyouhifuko.com/news/world/7165/

兵庫・無資格の美容施術を摘発、「名義貸し」「法律違反」…“偽クリニック”手口明るみに、摘発の波は全国へ広がるのか、行政指導や処分も無視する厚顔無恥な実態【編集長コラム】
https://biyouhifuko.com/news/column/11333/

【速報】無資格“偽クリニック”摘発、神戸市元町で堂々施設、点滴など美容施術、医師が離脱し、母娘が看護師に指示、兵庫県警が2月13日に発表
https://biyouhifuko.com/news/japan/11324/

無資格で注射やまぶた切開、中国籍の3人逮捕、池袋のマンション1室で違法施術、警視庁が2025年2月19日に発表
https://biyouhifuko.com/news/japan/11442/

刺青(タトゥー)とアートメイク、「刺青施術に医師免許は不要」の司法判断を否定するのか?「通知は可及的早急に撤回を」、連載【細川亙 現代美容医療を殿が斬る】Vol.1
https://biyouhifuko.com/news/column/10003/

アートメイク人気の裏で“ヤミ看護師”が行う違法施術が激増、値段は3分の1以下…「場所はクリニックと違うから気をつけて」被害女性が語る実態
https://shueisha.online/articles/-/254726

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