12.25
顎下脂肪吸引、即日施術の当日に発生した血腫悪化のトラブル、「最初は副作用か区別が付かなかった」、「中卒弁理士」として活動する30代女性が経験した危険 Vol.1 | ヒフコNEWS
大阪で“中卒弁理士”として活動し、SNSで注目を集める瀬戸麻季さん(34歳)。30代を過ぎてから始めた美容医療は、これまで大きな不満を感じることもなかった。だが、今年11月下旬、顎下と頬の脂肪吸引を受
情報源: 顎下脂肪吸引、即日施術の当日に発生した血腫悪化のトラブル、「最初は副作用か区別が付かなかった」、「中卒弁理士」として活動する30代女性が経験した危険 Vol.1 | ヒフコNEWS

脂肪吸引後にトラブルを経験した瀬戸麻希さん。(写真/編集部)
大阪で“中卒弁理士”として活動し、SNSで注目を集める瀬戸麻季さん。1990年生まれの34歳。SNSでの情報発信を中卒弁理士として行い、その投稿で多くの反響を得てきた。「多分日本で、中卒の弁理士は私くらいじゃないかなと思います。弁理士自体が全国で1万人くらいしかおらず、しかも理系が多い。高学歴が普通なのです。資格取得そのものは学歴不問ですから、中卒でも資格を取得できました」
そんな瀬戸さんは11月23日の昼に顎の脂肪吸引を受けたところ、夜に皮下出血が徐々に悪化。結果として救急車を呼び、神戸の病院で3日間、ICU(集中治療室)で入院する状況になった。
この時に瀬戸さんは25日の朝に次のように写真を付けてXに投稿した。
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瀬戸さんが血腫発生の後に撮影した写真。(写真提供/瀬戸麻希さん)
Xの投稿
土曜日に、某大手の有名美容整形外科で顔の脂肪吸引をしたところ、
直後に、首に大きな血腫が出来て呼吸が苦しくなったので救急車を呼び、
現在、神戸市立医療センター中央市民病院のICUに入院🙄
気道閉塞防止のために経鼻人工呼吸器つけてるので、一言も喋れない🙄
改めて、顔の脂肪吸引って怖い…🙄
「施術を受けた医療機関を悪く思ってはいませんが、私の経験が脂肪吸引をした場合にこうしたトラブルが起きることがあると伝えることで、社会に役立てればと思いました」と瀬戸さん。筆者は12月11日に瀬戸さんに新大阪に近い会議室で会い話を聞いた。
即日施術を昼に受けて、夕方から血腫が悪化
瀬戸さんはこれまで何度か美容医療の施術を受けてきた。それにより自身の顔立ちに少しずつ調整を加えてきた。
「20代までは美容整形なんて全く考えてなかったんです。でも30歳を過ぎるといろいろ気になるところが出て、初めて受けたのが2年くらい前ですね。そのときは糸リフト、ボトックス、ヒアルロン酸だったんです。そこから裏ハムラや小鼻縮小とか、いろいろやってきて、今もボトックスやヒアルロン酸は定期的に打ったりしています」

脂肪吸引のトラブルよりもさかのぼること数カ月以内の写真。(写真提供/瀬戸麻希さん)
これまで大手クリニックでの経験は基本的に満足できるものだった。11月下旬により大阪の別のクリニックで受けた顎下と頬の脂肪吸引が、想定外のトラブルにつながった。
その日、瀬戸さんはカウンセリングから時間を空けず、即日で顔の脂肪吸引施術を受けた。費用は30万円弱ほど。
瀬戸さんは、医師には「ここをたくさん取ってください」と、顎や頬の辺りの脂肪を取ってもらうようにお願いしていた。
小さなカニューレで頬や顎下から脂肪を約8割取り除く計画だった。美容整形業界では即日施術が珍しくなく、特に疑問もなく手術台に上がった。施術したのは顎下と頬辺り。施術は午後3時頃から始まり、終了したのが夕方5~6時頃。
瀬戸さんは「終わった直後は少し腫れている程度で、ちょっと腫れたかなという感じでした」という。
同日の夜8時くらいから急に腫れ始めた。顎から頬にかけて血腫が発生して、赤黒くパンパンに腫れが上がった。4歳の双子の子どもたちは状況を当然飲み込んではおらず、まさか命に関わる事態になるとは思っていない。「ママ、太りすぎじゃない?」「お菓子食べ過ぎたんじゃないの?」などと心配そうに話しかけてきた。しかし、状況は深刻さを増していた。「見た目がおかしくなってしまった」(瀬戸さん)
「最初は副作用かと思っていました」
瀬戸さんは当時をこう振り返る。
「これは副作用なのかな?と思ってしまうんです。結局、私は呼吸が苦しくなって初めてこれはもう異常事態だと判断しましたが、その境目が素人には分かりづらい。正常な副作用なのか、それとも危険な状態なのか、その線引きが難しいです」と実感を込めて語る。
しかし、その腫れは尋常でなく、仰向けに寝ると呼吸が苦しくなるほどになった。
「どんどん腫れがひどくなって怖くなりました。2月頃にどこかで脂肪吸引が原因で死亡事故があったというニュースを思い出し、これ、呼吸が詰まるんじゃないかと不安になったのです。その時にも、まだとりあえず朝まで様子を見ようかと思っていました」(瀬戸さん)
続いて、後編では、救急車で病院に運ばれてからの経験と、そこで感じた思いや得られた教訓などを伝える。(続く)

脂肪吸引後の血腫発生により、治療後も顎の下がたんこぶのように硬く腫れている。(写真/編集部)
「救急隊の方も私の顔を見てびっくりしていました。これは緊急事態と言われ、近所の病院に搬送しようとしたのですが、どの病院も受け入れできないと言われてしまいました。結局、兵庫県の救急患者を断らないと有名な『神戸市立医療センター中央市民病院』に運んでもらいました。家から30分ほどかかったと思います」(瀬戸さん)
救急車を呼んでも、受け入れ先を探している間に悪化する可能性も考えられる。呼吸が止まったら一刻を争う。「事前に手を打たないといけないと痛感しました」と瀬戸さん。美容医療の手術を受けたときには、不測の事態が起きた場合にどのように対応すべきかを、医師に相談しておくことは重要だろう。
「脂肪吸引は呼吸器周りに影響が出るんだなと実感しました」(瀬戸さん)
情報として知ってはいても、まさか自分がそうなるとは思わないもの。「脂肪吸引は気軽に受ける人が多いと思うんです。多分年間何万人も受けていると思います。それで死亡や重篤な事故はまれなことだろうと思っていました。交通事故に遭うような低い確率だろうと。まさか自分がその確率を引くとは思っていませんでした」と瀬戸さんはいう。

瀬戸さんが血腫発生の後に撮影した写真。(写真提供/瀬戸麻希さん)
MRIなど各種検査の末、医師たちは「このままでは呼吸が止まる可能性がある」と判断し、ICU行きを決定。鎮静剤を投与され、鼻から挿管することで辛うじて気道を確保した。幸い外科的な手術は行わず保存的治療で対応可能だった。看護師たちが痰の吸引を繰り返し、鼻や喉は痛んだ。
「3日間はほとんど意識もはっきりしない状態でした。その後ようやく一般病棟に移って、少しずつ良くなりました」と瀬戸さんは振り返る。
首の回りが腫れてたんこぶのように

12月11日の写真。脂肪吸引後の血腫発生により、治療後も顎の下がたんこぶのように硬く腫れている。(写真/編集部)
筆者が瀬戸さんに会った日は、瀬戸さんが退院してから2週間ほどが経過した12月11日。
「だいぶ腫れは引きましたが、まだ血腫がたんこぶのように大きく腫れ上がっています。首が全然上に向かないし、口もあまり開きません。もともと歯科治療中で差し歯のメンテナンスが必要だったんですけど、今は口が開かなくて歯医者にも行けない状態です。接骨院など他の通院も全部ストップせざるを得ません」(瀬戸さん)
首の周りが硬くなっており、まさに頭にたんこぶができた時のような状態になっている。
なお、瀬戸さんの今回のトラブルが起きる前の写真も見せてもらったが、首の周りが血腫によって大きく腫れたことが理解できる。

脂肪吸引のトラブル以前、数カ月以内の写真。(写真提供/瀬戸麻希さん)
2~3カ月で腫れが引くと言われており、「激しいダウンタイム」というのが瀬戸さんの実感という。薬は飲んでおらず、幸い健康面の問題は起きていない。
一方で、緊急事態が起きたときの連絡が困難であるという課題が浮かび上がる。
瀬戸さんによると、施術をしたクリニックには当日、連絡が取れなかった。
「大手だと緊急連絡先がある場合もありますが、今回のクリニックはそういうのがありませんでした。夜10時くらいに腫れて、これおかしいぞって思ったけども、美容クリニックには連絡がつかなかった。やばいなと思って救急車を呼ぶしかなかった」(瀬戸さん)
治療費については、神戸市立医療センター中央市民病院と美容クリニックとの間のやり取りで、美容クリニックにより賄われた。瀬戸さんはここに掛かった治療費は知らされていない。自費診療のトラブルに対する治療であり、これは保険適用外となり、全額を負担することになった可能性がある。その後、美容クリニックからは看護師から様子伺いの電話が来るにとどまった。
SNS発信した理由
トラブルの後、11月25日朝にSNSで情報発信した。その後、眠りについたが、起きたら、多くの反響があり驚いた。
瀬戸さんは、「死んでたかもしれないと思うと、まだ幸運だったと思います。他の人に知ってほしいと思ったから発信しました。安易に受けるとこういうリスクがあることを知ってほしかったんです」と話す。「受けようと思ったけどやめたという声もありました。参考になる人もいました」(瀬戸さん)。一方で、「救急車の無駄遣いするな」という心ない声も寄せられたが、命の危険があった中での判断であり、批判は疑問を感じるという。
顔の脂肪吸引はリスクが高いという警鐘を鳴らせたことは良かったと瀬戸さんは感じている。
今回のケースは、本人が想定していなかった危機的な状況を通して、美容整形の「副作用」と「危険な状態」の境界線を判断する難しさと不測の事態が起こったときのために事前にしておくべき連絡先の確保や対処法の準備を一般の目に明らかにしたと言える。瀬戸さんは「誰にでも起こり得ること。これをきっかけに、リスクへの理解や緊急時の体制整備が進むことを願っています」と話している。(終わり)
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