2025
04.03

「長生き家系と信じてた」突然のがん告知◆三上洋さん語る「仕事と病、やっておけばよかったこと」 #令和に働く(時事通信) – Yahoo!ニュース

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 ITジャーナリストとしてメディアで活躍している三上洋さんが今年1月、肺と腎臓の2カ所にがんが見つかったことを公表した。手術や入院を経て、治療を続けながら仕事に復帰した三上さん。がんになって初めて気

情報源: 「長生き家系と信じてた」突然のがん告知◆三上洋さん語る「仕事と病、やっておけばよかったこと」 #令和に働く(時事通信) – Yahoo!ニュース

ITジャーナリストとしてメディアで活躍している三上洋さんが今年1月、肺と腎臓の2カ所にがんが見つかったことを公表した。手術や入院を経て、治療を続けながら仕事に復帰した三上さん。がんになって初めて気付いたことや、医療費の現実、「やっておけばよかった」と後悔したことなど、今感じていることを語ってもらった。(時事ドットコム取材班キャップ 太田宇律) 【写真】レントゲンに写った肺の影 ◇「実は三上、がんになりました」  三上さんの専門は、情報セキュリティやSNS問題、最新デジタル機器など多岐にわたる。「時事ドットコム取材班」の特集にもたびたび登場しており、2024年に発生した能登半島地震では、SNSで相次いだ架空の救助要請と「インプレッション稼ぎ」の関係について、元日の深夜から急きょ電話取材に応じていただいたこともあった。  取材のメールを送ればたちまち返ってくるフットワークの軽さで、解説も分かりやすく、快活な人柄。それだけに、三上さんが今年1月20日に突然公開した動画はショックだった。「実は三上、がんになりました」―。人間ドックで肺と腎臓に腫瘍が見つかり、5年後の生存率は半分しかないと医師に言われたと、画面の中の三上さんは苦笑いしていた。  入院、手術、放射線治療、そして抗がん剤―。三上さんはその後、動画やSNSで治療経過を逐一報告し、2月には早くも仕事に復帰した。突然のがん告知を受け、今どんなことを感じているのだろうか。取材を申し込んでみると、30分もたたずに「ありがたい話、喜んでお受けします」と返信があり、3月19日にインタビューが実現した。 ◇「長生き家系」と思っていたのに  ―最初に異変を感じたのはいつだったのでしょうか。  昨年春すぎに、多発性の円形脱毛症になりました。夏には急に両ひざが強く痛み出して、地元の整形外科を訪ねたんですが、「レントゲンはきれいな状態で、原因が分からない」と言うんです。妻と子どもにも「行け行け」と勧められたので、11月に人間ドックへ行くことにしました。  私はいま59歳。父親は95歳まで、祖父も97歳まで生きたので、完全に「長生き家系」だと思っていました。大学を卒業して映像制作会社に2年勤めた後、25歳からずっとフリーランスなんですが、そこから一度も健康診断も人間ドックも受けたことがなかったんです。入院したこともないし、体に不調が起きたこと自体、ほとんどなかったんですよ。  ―人間ドックでは何と。  おなかに潤滑剤を塗って、機械でぐりぐり調べるエコー検査ってありますね。あれが「どうして?」と思うほど長かった。その後もずいぶん待ち、「テレビ収録の予定に間に合うかな」と心配していたんですが、ようやく呼ばれたら「三上さん、影が見つかりました」と。肺と腎臓に、それぞれ6~7センチほどの大きさの腫瘍があったんです。  すぐに病院の腫瘍内科で検査を受けて、がんであることが分かりました。「(治療困難な)ステージ4の疑いです」と言われ、当時はがんの知識もないので「ステージ4って、確か末期だよな…」と思い、パニックになりました。家を建て替えたばかりだし、大学生の子どもの学費はどうしよう、仕事はどうなるんだ―。90歳まで生きられると思っていたのに、何も考えられなくなりました。 ◇「ステージ3B」始まった治療  詳しい検査の結果、三上さんのがんは片方が転移して二つ目ができたのではなく、別々の腫瘍が偶然同時にできた可能性があることが分かった。そうであれば、治療で根治できる可能性がある。「そう聞いて、やっと少し冷静になれました。もしかしたら生き延びられるかなと、光明が差したんです」  腎臓のがんは、12月中に臓器ごと手術で切除。一方、胸にできた肺腺がんは、かなり進行していたものの、根治を目指せる「ステージ3B」と診断された。こちらは30日間の放射線治療と併せ、2種類の抗がん剤を投与。さらに、がん細胞を免疫細胞の攻撃から逃れられなくする新しい治療薬「免疫チェックポイント阻害剤」も使うことになった。  治療を始めてから、三上さんは急激に気分が悪くなる「迷走神経反射」という発作にたびたび悩まされるようになった。ただ、懸念していた抗がん剤の副作用は「全くと言っていいほどなかった」といい、治療は順調に進んでいるという。直径7センチ以上あった肺腺がんは、放射線治療などが功を奏し、直径4~5センチほどに縮小した。 ◇坂上忍さんがくれた「ジェラピケ」  ―1月20日に動画でがんを公表されたときは、どういうお気持ちでしたか。  フリーランスで働いていることもあり、公表するかはずいぶん迷いました。「治療中の人には仕事を頼みにくい」と思われるかもしれないからです。ただ、セミナーや解説などの仕事で関わりのある企業には、事前に治療で休業することを伝えないといけない。50~60社に個別に伝えるくらいなら、もう包み隠さず動画で公表したほうがいいと思ったんです。  ―ITジャーナリストとして活動する傍ら、日常的に動画配信もされていますね。  2010年ごろから、Ustreamやニコニコ動画といった媒体で、個人的な配信をずいぶんしてきました。病状を動画で公表したのは、何かあったときにネット上で話すこと自体が、私にとってのアイデンティティーになっていたことも大きかったと思います。動画配信者は、生きること自体が全部「ネタ」なんですね。  ―公表後の反響はどうでしたか。  治療のためキャンセルしなくてはいけなかった仕事もありましたが、病状をお伝えするとすごく皆さん優しくしてくださいました。仕事関係だけでなく、知っている人からも、知らない人からも、たくさんの励ましがあって。中には「自分もステージ3です」とか「私はステージ4ですが元気に生きてます」という方もいました。  ―そうした声に力をもらった?  はい。退院したときは、フジテレビのバラエティー番組「バイキング」でご一緒した俳優の坂上忍さんが大宴会を開いてくれました。退院したばかりなのに、(ルームウェアブランドの)「ジェラート・ピケ」のパジャマまでプレゼントしてくれて(笑)。フリーランスって、とても孤独な仕事だと思っていましたが、そうでもないんだなと感じて、うれしかったですね。

がんを患って初めて気付いたことや、呼び掛けたいことは―。そう尋ねてみると、「私が言える立場ではないかもしれませんが」と前置きした上で、「やはり人間ドックかがん検診、せめて健康診断は受けてほしい」という答えが返ってきた。「脱毛やひざの痛みががんと関係していたかは今も分かりません。ただ、それで気付く前に、半年でも早く検査していたら状況は全く違ったはずなんです」。淡々とした表情に、後悔がにじんだ。

ポイントなどお得情報にも詳しい三上さんらしく、次に挙げたのは「住宅ローンのがん団信(団体信用生命保険)を検討して」。これは、被保険者にがんの診断が確定したら、住宅ローンの残高が0円になる特約のことだ。「こうした特約に入れるのは50歳くらいまでなんです。いまは2人に1人ががんになり、しかも治療で治せる時代。私もこれに入っていれば良かった…と後悔しました」と笑う。

そして三つ目に、真剣な表情で挙げたのは「標準治療でやろうよ」という呼び掛けだった。がんを公表した後、知人らから「変な治療の勧誘」が10件近くあったのだという。「標準治療は、認可されるまで時間は掛かりますが、科学的根拠と成果の蓄積があるしっかりとした治療法です。根拠の怪しい自由診療をしているところの中には、標準治療を受けないよう患者に勧めるところもある。『それは絶対に駄目だよ』と伝えたいですね」

◇「仕事も治療」気付いた意外な関係

仕事と治療の傍ら、毎日のようにSNSでの発信を続け、動画配信もしている三上さん。体調への影響を尋ねると「合計1カ月以上入院したので体力は落ちていますが、睡眠時間を長く取るようにしているので大丈夫。そうでなければ、毎日動画なんてアップできませんよ」と笑った。もし体調が悪くなったら、それも隠さず動画の「ネタ」にするのが三上さん流だ。

医療費についても、包み隠さず教えてくれた。三上さんがつけている記録によると、2月中旬までに掛かった治療費の総額は保険適用前で約511万円。保険適用で単純に3割負担とした場合、三上さんが支払う額は約153万円となるが、高額療養費制度のおかげで、差額ベッド代などの費用を入れても総額約72万円ほどに抑えられたという。

高額療養費制度があっても、今後も治療にはお金が掛かる。「がんと長く付き合っていくには、一生懸命働ける環境を作ることもまた、治療の一環なんだと気付きました」と、三上さんは話す。「明日の治療がどうなるか不安がるより、目の前の仕事をどうするか、忙しく考えている方がずっと前向きになれるんです。今後もたくさんお仕事をいただいて、一生懸命頑張っていきたいですね」

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三上洋(みかみ・よう)ITジャーナリスト 1965年生まれ、東京都世田谷区出身。東洋大学社会学部卒。テレビ番組制作会社を経て、1995年からフリーライター・ITジャーナリストとして活動。主な著書に「深掘り!IT時事ニュース」(技術評論社)など

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