02.05
広告宣伝紹介の注意点
1) 法的にどこがアウトになりやすいか(中核は「療担規則」)
保険医療機関は「紹介料(キックバック)で集患」自体が原則NG
療養担当規則(療担規則)2条の4の2の趣旨として、事業者(紹介業者、集合住宅・施設の運営者等)やその従業員に対し、患者紹介の対価として金品を提供して誘引することを禁止する、と明確に示されています。改正の目的も、過剰診療の防止と 患者の自由な医療機関選択(フリーアクセス)の確保です。 (厚生労働省)
さらに厚労省の疑義解釈(Q&A)では、判断枠組みを
- ① 患者紹介の対価として経済上の利益提供がある
- ② それにより 自院で受診するよう誘引している
の両方に当たると「禁止行為」と整理しています。 (厚生労働省)
2) “紹介料”と見なされる範囲が広い(名目で逃げられない)
厚労省Q&Aは、契約書の名目に関わらず実質で判断すること、そして「潜脱」を強く警戒していることを明記しています。例えば、
- 「広報業務」「施設との連絡調整」「運転業務」等の委託料に上乗せ
- 「診察室等の賃料(テナント料)に上乗せ**」
- 診療報酬の一定割合、患者数に応じた設定
は、実質的に紹介対価と扱われ得る、とされています。 (厚生労働省)
運用上の結論はシンプルで、成果連動(患者数・売上・診療報酬連動)の支払いはほぼ即アウト、または極めて危険です。 (厚生労働省)
3) まず社内ルールとして置くべき「3つの鉄則」
運用を作るなら、最低限この3つを“社内規程レベル”で固定すると事故が減ります。
鉄則A:成果連動で払わない
- 「1人紹介につき◯円」「予約成立で◯円」「売上の◯%」は原則禁止
(委託・賃料・コンサル料など名目が何でも同様) (厚生労働省)
鉄則B:患者の自由選択を担保する(施設・第三者に選ばせない)
在宅や高齢者住まいでは、患者の選択制限や過剰診療リスクが問題視され、厚労省が情報収集・報告を求める事務連絡まで出しています。 (地方厚生局)
→ 施設側に「特定クリニックに固定する」設計を作らない。
鉄則C:払うなら「実体のある役務」×「相場」×「証拠」
支払う必要があるなら、通常相場から逸脱していないこと、合理的な計算根拠が示せることが必要、とされています。 (厚生労働省)
→ “証拠づくり”が運用の本体です(後述)。
4) 現場での「安全側」の運用設計(契約・経理・実務)
4-1. 広告・集患(Web/紹介サイト/広告代理店)をどう運用すべきか
保険医療機関が「送客」や「成果報酬広告(アフィリエイト)」を使うのは特に危険です。
- 医療広告は、医療機関だけでなく 広告代理店・アフィリエイター等を含め“何人も”規制対象と明記されています(成果に応じて報酬が支払われる広告も定義されています)。
- つまり、外部業者に任せても「違反広告」が出れば巻き込まれます。
運用推奨(安全側)
- ✅ 固定の掲載料(定額):月額掲載、年間掲載など
- ✅ 役務内容(制作・運用・計測)を明確化し、患者数や売上に連動しない料金体系
- ✅ 医療広告ガイドライン適合チェック(虚偽・誇大・比較優良、体験談、ビフォーアフター等)を事前審査フローに組み込む
- ❌ **予約1件◯円、来院1件◯円、売上◯%**などの成果報酬は避ける(療担規則の「紹介対価」評価に寄りやすい) (厚生労働省)
4-2. 介護施設・高齢者住宅・集合住宅との関係(訪問診療/テナント診療)
ここが一番事故が多い領域です(厚労省通知でも典型例に出ます)。
高リスク例(避ける)
- 施設運営者(または従業員)に、入居者紹介の見返りで金品提供
- 施設内診察室の賃料が 診療報酬の一定割合、または患者数連動 (厚生労働省)
- 施設が「入居条件として特定クリニックの訪問診療を義務化」する(Q&Aで“あってはならない”趣旨) (厚生労働省)
安全側の運用(やるならこう作る)
- ✅ 施設との金銭の授受は “紹介の対価”にならない形に限定
- ✅ 施設内のスペース賃貸は
- 固定賃料
- 近隣相場の根拠(不動産相場資料・複数見積・鑑定までは不要でも比較表)
- 面積・利用時間・設備・原状回復・光熱費など契約を普通に整える
- ✅ 施設職員が入居者へ医療機関を案内するなら
- 複数医療機関のリスト提示(中立)
- 入居者本人の選択・同意の記録
- “特定院を推すインセンティブ”が入らないよう研修
4-3. 「委託費」「コンサル費」「連絡調整費」を払う場合の設計
厚労省Q&Aは、委託料に紹介対価が“上乗せ”される形を想定しており、名目だけ変えるのは危険です。 (厚生労働省)
運用の作り方(監査耐性を上げる)
- 契約書に以下を必ず入れる
- 役務の範囲(何を・どこまで・何回・成果物は何か)
- 料金(定額/時間単価×上限など)
- 患者数・診療報酬・売上に連動しない条項
- 記録提出(作業ログ、成果物、会議議事録、運転日報等)
- 監査協力条項、違反疑義時の解除条項
- 請求書は「○月分広報業務一式」ではなく、内訳と作業証跡を残す
- 相場性:近隣・同種業務の複数見積、社内稟議、価格決定のメモを保存
(Q&Aでも「通常より高くない」「合理的根拠」が必要とされています) (厚生労働省)
5) 自由診療(自費)なら紹介料はOKなのか?(ここは要注意)
ここは誤解が多いポイントで、厚労省が 「健康診断・予防接種(自費)」のケースで照会回答を公表しています。
- 療担規則は健康保険法に基づく「療養の給付/保険診療のルール」であり、健康診断や予防接種は療養の給付ではないため、療担規則2条の4の2の禁止規定は適用されないと回答しています。
- ただし同時に、顧問の紹介活動(口頭営業や講演含む)は 医療広告に該当し得るため、医療法上の広告規制を遵守すべき、と整理されています。
運用上の実務判断(安全側)
- ✅ 「完全に自費で完結し、保険診療と混ざらない」領域は、療担規則リスクは相対的に下がる可能性がある(健康診断・予防接種の例)
- ❗ ただし 医療広告規制は残る(成果報酬広告・紹介スキームは広告として見られやすい)
- ❗ “自費のつもり”でも、実際に保険診療が混ざる・転化する(検査→受診、治療継続)設計だと評価が難しくなるので、**社内ルールでは「原則NG、例外は法務審査」**が無難です。
6) 違反が発覚したときの現実的なリスク(監査・処分・公表)
- 厚労省は毎年度、指導・監査・取消の状況を公表しており、取消等が一定数発生しています。端緒(きっかけ)の大半が、保険者・従事者・被保険者等からの情報提供とされています。
- 地方厚生局は、不正・著しい不当がある場合に 指定取消・登録取消を行い、公表する運用を明記しています。 (地方厚生局)
- 実際に各地方厚生局サイトで「取消一覧」を掲載しています。 (地方厚生局)
紹介料そのものが直ちに「不正請求」と同列になるとは限りませんが、在宅・施設案件では過剰診療や請求の適否まで一体で見られやすいので、結果的に監査のリスクが上がります(厚労省通知がこの観点を明示)。 (厚生労働省)
7) すぐ使える「運用チェックリスト」(社内審査の質問)
外部提携や支払いをする前に、最低限この10問をYes/Noで潰すのがおすすめです。
- 支払いは 患者数・予約数・売上・診療報酬に連動していないか?(連動なら原則NG) (厚生労働省)
- 相手は「紹介業者」「施設運営者」「その従業員」等、紹介に関与し得る者ではないか? (厚生労働省)
- 契約書に「紹介の対価ではない」だけでなく、役務の範囲・成果物・記録提出が書けているか? (厚生労働省)
- 委託費・賃料は 地域相場と比較して説明できるか?(見積・比較表があるか) (厚生労働省)
- 賃料が「診療報酬の◯%」などになっていないか?(極めて危険) (厚生労働省)
- 施設入居者の医療機関選択を、施設側が実質的に決める設計になっていないか? (地方厚生局)
- 広告・Web施策が **成果報酬(アフィリエイト等)**になっていないか?
- 外部サイト・SNS投稿等が医療広告ガイドラインに適合しているか(虚偽/誇大/比較優良 等)?
- 施設案件では、患者本人の同意・選択の記録が残る導線か?
- 「止めどき」(疑義が出たら支払い停止・契約解除できる)を契約に入れているか?
8) 結論:どう運用すべきか(実務の落としどころ)
- 保険医療機関の基本方針:紹介料・成果報酬での集患はやらない(名目変更も不可)。 (厚生労働省)
- 支払うなら、“紹介”と切り離された実体ある役務に限定し、相場性と証拠を整備する。 (厚生労働省)
- 自費領域はケースにより療担規則の適用が外れることがあり得るが、医療広告規制は残るので、成果報酬型は特に慎重に。
- 監査は情報提供から始まることも多く、公表もあり得るので、**「説明できる契約・経理・記録」**を最初から作る。
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